Tentative

おもしろいとおもったことをもう一回かんがえるせいりするまとめる

テラスハウスの副音声がおもしろい:後編

この記事は、前編からのつづきです。

 

8. ここまでのまとめ

では、前回までを一度まとめてみます。

  • テラスハウスは「一つ屋根の下での複数のオシャレ男女の共同生活に迫ったオシャレリアリティ番組」である
  • スタジオのセットがどこかの家のリビング
  • 構成上、番組をけん引するのは「シェアハウスの様子VTR」であり「スタジオトーク」ではない
    • ありがちなワイプがない
    • 締めのコメントもなく終わる 
  • 「スタジオトーク」がメインではないのに、スタジオメンバーは半分が芸人という違和感

内容に一切触れていないのはネタバレを気にかけているわけではなく、個人的に重要な、面白いと思っているのがそこではないからです。

番組を制作されているのはプロの方たちですから、上でまとめたような「普通のバラエティ番組とはほんのすこしだけ違う構成と違和感」が偶然とは考えにくいです。それらがどこに適用されているのか。そこがまさに個人的にドハマりしている部分なのです。

それが「副音声」という存在でした。

 

 

9. 副音声はどう録られているのか

テラスハウス」の副音声について、公式からは「副音声ではスタジオメンバーによるVTRの実況を聞くことができます」という説明がなされていました。

出演者がどのようにしてそのVTRを見て実況をしているのかは、CM前のつなぎシーン(アニメで言うアイキャッチ)から、垣間見ることができます。それは「4. 「スタジオトーク」について」で書いたとおりで、出演者はどこかの家のリビング(のようなセット)にいて、リビング(のようなセット)に置かれているテレビ(=モニタ)を見ています。

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よって「出演者は視聴者と同じ状況でVTRを見ながら実況」していて、その実況内容が「副音声」となっているといってよいでしょう。

では、副音声の内容は一体どういったものなのでしょうか。

 

10. 副音声の内容について

例えば、女性陣が夏祭りに行って楽しく金魚すくいをしているだけのシーン。
それを副音声では

「そんなポイの使い方ではとれない!」

「このポイ強すぎるな、おかしいぞ」

「あれこれ、またネットでやらせと言われちゃうぞ」

と必要以上にポイをいじったりします。

ある女性が意中の男性のために「ごめんね、時間なくて」と用意した朝ごはんがまさかの…

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「白ご飯とやきとりの缶詰」でした。
裏面では水を得たように爆笑しながら大いじりです。

(個人的に神回だった9/1の)箱根日帰りデートのとき、二人で並んでいた歩いてた時に女性が車止めのポールを股間にぶつけてしまいました。本編では一瞬映っただけでしたが、裏面では全員が爆笑。

「ちょっと一回Vを止めて欲しい、あっち(VTR)の時の流れについていけない」

とYOUさんが笑い続けてしまって、全員でそのくだりを繰り返し笑っている。

その後にワイン温泉に入った時には、

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「この画、ごっつ(えぇ感じのコント)っぽくない?」

「水没家族だ!」

と笑い、夕食を食べるためにおしゃれなレストランに入った時には

「おいおい、今夜ぶちかますんじゃねぇの?」

とイジって誰もVTRの流れを追えていない。トリンドルさんがその都度、いまどうなっているかを説明する始末。

副音声では、実況してるというよりは(「主音声」ではないし、ワイプなどで抜かれていることもないのでリラックスした状態で自由に好き勝手に)「リビングで仲間たちとテレビを見て」感想を言いあうように自ら「テラスハウス」を盛大にいじっていた、、、

つまり、「一つ屋根の下での複数のオシャレ男女の共同生活に迫ったオシャレリアリティ番組」の裏側で、「実況トークバラエティ番組」を展開していたのです。

 

11. 違和感の氷解

8.でまとめたときには感じていた「普通のバラエティ番組とはほんのすこしだけ違う構成と違和感」は副音声という存在によってすべてが納得へと変わりました。

 

テラスハウスは「一つ屋根の下での複数のオシャレ男女の共同生活に迫ったオシャレリアリティ番組」である 

この定義が強固であればあるほど、本編のクオリティが高ければ高いほど、副音声が生きてきます。

 

スタジオのセットがどこかの家のリビング

これは「視聴者と同じ状況で見ている=視聴者と同じ立場」ということを暗に示しています。

追記)そして、これは「シェアハウスの様子VTR」が、スタジオ出演者にとっても「テレビの番組」であるということも同時に示しています。

 

構成上、番組をけん引するのは「シェアハウスの様子VTR」であり「スタジオトーク」ではない

・ありがちなワイプがない
・締めのコメントもなく終わる

出演者が「視聴者と同じ立場」であることを更に強くしている部分がここです。ワイプとして画面にも写ってないし、先の展開知らなさそうのなので、これは「視聴者と同じ空間で一緒に見ている」と言ってしまって差し支えないでしょう。

本編だけ見ていると、盛り上がって展開の先にやってくる突然のエンディング。スタッフロールの画面がでた瞬間思わず「おい!(いいところで終わるな!)」と声を上げることがあります。

副音声はスタッフロール時も生きていて、出演者も裏では「おい!」と声をあげています(そして、スタッフロールが終わるまでずっと喋ってる)。つまりこれは「本編で何が起きるのか知らない」ことを証明しており、「視聴者と同じ立場」というものを強くしています。

追記)ここでも「シェアハウスの様子VTR」が、スタジオ出演者にとっても「テレビの番組」であるという意味を強くしています。

 

「スタジオトーク」がメインではないのに、スタジオメンバーは半分が芸人という違和感 

副音声が「実況トークバラエティ番組」であると気がついたときに、この違和感は納得へと変わりました。

  • YOU…恋愛のカリスマ
  • トリンドル玲奈…普通の女の子(恋バナ大好き、よく高まる)
  • 三代目J-soulBrothers登坂…イケメン
  • チュート徳井…おもしろくてモテる男子
  • アジアン馬場園…美人キライ
  • 南キャン山里…ゲスいキモいオモロイ(※水曜日深夜帯のラジオ聴取率調査No.1)

どう観たって完璧な座組でした。面白くないわけがない。しかも「オシャレ男女の共同生活」は、南キャン山里さんにとっては最高に料理しがいのあるお題です。副音声では深夜ラジオにもまさるイジりを展開し、爆笑を生んでいます。

テラスハウスは「一つ屋根の下での複数のオシャレ男女の共同生活に迫ったオシャレリアリティ番組」です。出演者の人たちは全員それを理解しています。なので、表面の「スタジオトーク」では、その前提にそぐ合わないものは話しません。あの、股間に車止めという最高に面白いシーンの話なんてもってのほかです。(表面では言えないことをわかっているからYOUさんは副音声の中で「私は(股間に車止めを)忘れない!」と宣言します)

演者のプロ意識を垣間見れると同時に、「裏ではこんなこと言っていたよね」という共通の秘密のようなものができて、一層スタジオ出演者との距離感が短くなります。


12. 絶妙なバランスで存在していた「実況トークバラエティ番組」だった

個人的に結論付けると、テラスハウスは「ドラマを見ながらすごい面白い人達と一緒に家で同じソファに座りながらテレビを見ている体験ができる実況バラエティ」です。

そして、ここまで(だらだらとまとまりもなく)述べてきたとおり、よくあるバラエティ番組と同じにならないように実に絶妙なさじ加減で成り立っています。そこに2年間という放送期間の中で、番組の構成を練り上げてきた制作スタッフの方たちに敬意を払わずにはいられません。

テラスハウスは残念ながらあと一回で終了してしまいます。さすがにラスト回は副音声でもしんみりとする空気が流れることが予想されるので、爆笑するような副音声はもう聞けないかもしれません。

テラスハウス」が終わって個人的に寂しいのは、シェアハウスの物語がもう見れなくなることではなくて、あのスタジオ出演者と一緒に「テラスハウス」を見ることができなくなることです。

 

 

 

 

テラスハウス」の副音声のどこがおもしろいか個人的にせいりしてまとめてみました。やっぱり構造がよかったんですね。あと芸人さんの話術(+トリンドル玲奈の無邪気な高まり)が面白かった。

ある女性に恋心芽生えた現役水球日本代表選手にむかって、南キャン山里さんが「水球せえよ」と突っ込み続けた功績は忘れません。(これが言いたかった)  

 

追記:

ちなみに表面が嫌いではないのです。表面を見る耐久性がぼくにないだけです。必要以上に照れてしまうんです、すいません。でも耐久性があれば表面は実に面白い興奮する物語だと思います。出演者はリアル世界にいる人達で、彼らは普通にリアル世界で生活してるし、リアルにある場所に出かけていくし、他のテレビにも出てくる。住んでる地域も鎌倉だと明かされている。アニメで言う聖地巡礼なんかも容易にできる。とにかく(台本があろうがなかろうが)「鎌倉方面でなにか起きてる」ことは確実にわかるわけです。シェアハウスにいたお笑い芸人のライブにもいけるし、写真展も行ける。これすごいと思う。なんとなくフォローしたインスタグラムの写真の中に出てくるし。物語に介入することはできなくとも、日常の間に潜んでいることになる。これってすごい。だから、なにかもっと面白いことが起きたかもしれないのに、残念